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大阪高等裁判所 昭和35年(ラ)140号 決定

抗告人 松浦勇太郎

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とすか。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

案ずるに、本件における全資料によるも、債権者安田信託銀行株式会社が抗告人に対し本件競売申立を取下げることを約束した事実の疎明がないので、このことを前提とする抗告人の主張は採用することができない。

ちなみに、競売法による競売手続において不動産の再競売を命ずる決定に対しては、まず民事訴訟法五四四条により異議の申立をなしその申立に関する裁判に対し抗告をなすべきものであるとの判例(大審院昭和一二年(ク)第六号同年二月二日第二民事部決定民集第一六巻一九頁)があるが、再競売を命ずる決定は、競売裁判所の裁判であるという形式を重視し、これに対して不服ある者は直ちに即時抗告(民訴法五五八条)をなし得るものと解するのが相当である。けだし、執行方法に関する異議は、規定の地位および内容から見て執行吏の処分に関するものと認めるのが相当であり、また、即時抗告を許す裁判についても、原裁判所の再度の考案が許されるので(同法四一六条二項・四一七条)、これを活用すれば抗告によつても異議を認めたのと同一の結果になり、申立人としても異議を棄却されてから更に抗告に及ぶ手続も省けるので、実際的にも即時抗告説の方が便宜であるからである。

他に記録を調べてみても、原決定を取り消すべき違法の点は認められないから、民訴法四一四条・三八四条・九五条・八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 田中正雄 裁判官 河野春吉 裁判官 本井巽)

抗告の趣旨及び理由

原決定はこれを取消す。

本件不動産競売の再競売を取消す。

本件不動産競売事件については度々債権者安田信託銀行株式会社と抗告人とが話合の結果右債権者より本件不動産競売事件を取下げることに相成つて居り既に示談解決済であります。しかるに、昭和三十五年五月十三日付を以つて抗告人宛本件競売事件の物件につき再競売を命ずとの決定の送達を受けたので、抗告人としては了解に苦しむもので早速債権者安田信託銀行株式会社に対してこれが事情の説明を求めましたが、何等ようりようを得ません。依つて本件抗告をなすと共に御庁より事情御調査の上何卒抗告の趣旨の通りの御決定下さるようお願い申上げます。

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